2015年10月8日木曜日

西戸田の里 (4)

 西戸田養護学校の財田保治校長先生の巻頭の文章、「西戸田の里、発刊に際して」が一番最後になってしまいました。今回で、「西戸田の里」最終回です。藤原さん、本当に貴重な資料をありがとうございました。

 ここに「西戸田の里」の様子の一端をお知らせ出来る機会を得たことは、まことに喜びに堪えません。在所在学中の皆さんは、住みなれた家庭と多くのお友達と学んだ学校を離れての淋しさはあろうが、神戸全市の数多い該当者の中から、御家族の方や学校の先生方等の有難い御理解によって、少年保養所へ入所が出来ました。一生を通じて思い出となる集団生活の中に、健康な身体を目指して規制された療養生活を、また、学校では前の学校と殆ど変わりのない勉学が出来る、この喜びを、この幸福を、深く肝に銘じて平素の生活と学習に、一段の精進をしていただきたいと念願するものであります。
 本年度は、次の様な教育努力目標を掲げて今日まで参りました。少年保養所に併設されている本校として、病弱養護学校の特殊性を生かすため、より正しくより楽しい学習と生活を目標に、
1 自主性、社会性を伸ばす生活指導
 ・ 児童生徒会活動の伸長
   組織と運営の強化、クラブ、部活動の助長、学級会、ホームルームの活用
 ・ 情操教育の重視・・・環境の整備
2 健康教育の重視
 ・ 養護、体育のカリキュラムの検討
 ・ 保健教育計画の完全実施
3 道徳教育の推進
 ・ 道徳カリキュラムの検討
4 個別指導の重視
 ・ 病気のために遅れている児童生徒の救済
 ・ 基礎学力の助長
 以上、先生方と色々話し合い、皆さんの毎日の生活の上に学習の上に、少しでもプラスになる様にと願ってきました。ふり返って見ると遅々とした歩みで、職員一同深く反省させられております。
 
 全治退所の皆さん其の後お元気ですか。「西戸田の里」 の生活を生涯での思い出として、毎年11月上旬の「里の会」には是非元気なお姿をお見せ下さいますようお待ちしております。

2015年10月5日月曜日

西戸田の里 (3)

 昭和42年、西戸田養護学校発行の「西戸田の里」の第3回です。今回は、「1年のあゆみ」の後半部分を掲載させていただきます。

 1年のあゆみ
 全校描画会
 みんなで一緒に楽しく絵をかこうという目的のもとに、全校描画会が、年2回計画された。小学部1年から中学部3年まで、各学年ごとに題を決め、製作した。小学部週2時間、中学部2,3年は1時間という少ない時間数では、1テーマで何週にもまたがり、興味の持続がむづかしいが、1日描画会は時間数の補充も兼ね、楽しく製作した。午後の安静中に、校長先生をはじめ、先生方全員に図工室で審査をしていただき、写生毎に特選1,入選1を決め表彰した。

 左義長
 元来、門松や、しめ飾り等を焼いて悪魔を払い、福を願う火祭を左義長といいます。みんなで、パチパチとすさまじい音で燃え立つ火の廻りを囲みます。1月13日冬の寒さもどこえやら、思わず一歩後退です。習字の上達を願って、竹の先に書初を付け、炎に近付けて空高く舞い上げました。火が衰えてきますと、残り火でお餅焼きです。おいしそうなにおいがしてきました。生焼けの餅、真黒な餅、口の廻りを黒くして食べました。みんなの顔は、真赤です。

 誕生日会
 本校では月例行事として、誕生日会を行います。当日は全校で、その月に生まれた在校生と先生方の誕生日を祝って、演芸会を催します。演技は出演当番の学年の全員で行われます。出し物は、器楽演奏、合唱、劇などです。詩や作文の朗読もします。また、先生の飛び入りは楽しみの一つです。単調な生活に潤いをあたえようと、娯楽部員を中心に、みんなで力を合わせています。今後、もっともっと楽しいものにして父兄の皆さまにも御覧頂きたいと思っています。

 映画会
 本校の児童生徒は全員親もとを離れ、療養のかたわら学校で学習を続けていますが、これら児童生徒の気持ちを慰め、また情操育成のために催される映画会は大変意義のある会であります。本校のような小規模校では、単独でそのような会を催す事は困難なため、西神地区視聴覚教育連盟に加入して年間8回、夏期7、8月には夜間納涼映画会を各1回ずつ娯楽を主にした映画を上映しています。また本年度は16ミリ映写機を購入して、神戸市立校園で結成されたフィルムライブラリーのフィルムを利用して学習面にも活用できるようになりました。

 図書室だより
 「情操を豊かに」という計画をもとにし、本年度は特に美術教育充実のために世界美術全集の購入と各学年に応じた文学書の購入をしました。また下記の方々より図書の寄贈をしていただきました。
 退所生、渡辺敏一氏より70冊、県立明石高等学校学生有志より51冊、平凡社より7冊、以上128冊。西戸田の里で療養を続ける児童生徒は週1回の貸出し図書を療養の友とし、感謝しつつ読書に耽っています。

 国旗掲揚塔
 去る9月に、校舎前の花壇の中に、国旗掲揚塔が設置されました。高さ約10米程度ですが、澄みきった空に、きよらかな風を受けて校旗がひるがえっています。朝の日もいとわず、冷たい手にむちをうちつつ週番の生徒が今日も、祈るかのように校旗をあげている姿は本当に涙ぐましい程清純です。
 
 ぼくら わたしら がんばろう
 大いなる試練の 恵み受けて
 希望はるけく 里の気に
 螢雪の道 励みつつ
 高く かかげた 自治の旗

と校歌にもうたわれているように、この学び舎の児童生徒は学習に、療養に、元気にはばたける日のために精進いたしております。

2015年10月3日土曜日

西戸田の里 (2)

 昭和42年、西戸田養護学校発行の「西戸田の里」の第2回です。今回は、「1年のあゆみ」の前半部分を掲載させていただきます。

 1年のあゆみ
 始業式、入学式
 年度はじめの気分でいつもの集会よりひきしまった感じ。今年の西戸田丸の出発は児童総勢75名。療養しながら学ぶことの意義を年度はじめに強調される校長。10才の差をもつ子らにのみこませることのむずかしさ、心なしかいつもより緊張の面持ち。
 始業式の次は入学式と続く。新1年生2人が校長先生によばれて3歩前進。「みんなとなかよくべんきょうしたり、あそんだりするように」と。一同はくしゅ。時に4月7日9時30分。外は晴天そよ風。
 
  PTA総会
 1.期日 4月24日(日)
 2.場所 家庭科室
 3.集まった会員数 約55名
 4.順序
   ①はじめのことば
   ② 会長あいさつ
   ③校長あいさつ (新任職員紹介)
   ④所長あいさつ
   ⑤議事   ・40年度会計決算報告
          ・新役員発表
          ・新旧職員あいさつ
          ・41年度予算審議
   ⑥おわりのことば
 5.幹部役員の氏名、次の通り
     会長    岩佐光三
     副会長  竹中 嵩
       〃   高渕久男

 夏期学校
 保養所への協力の一助として例年のとおり夏期学校を開くことにした。即ち夏期課外日中の16日間を午前中職員が交替で児童生徒の指導にあたった。
 教科の復習、放送による学習等により知識の拡充をはかるとともにいっぽう写生会・音楽会・紙芝居・わなげ・ボーリング・レコード鑑賞・ホークダンス等レクリエイション的な面にも意を払い特に講師を招いての奇術やお話しの会は好評であった。とまれ有意義であったという反省をいただきつつ夏期学校を終了し得たことをうれしく思う。

 天文科学館と子たち
 「今年のバス遠足は、明石の天文科学館」と聞かされると、「なあんだ、しょうもない」と期待はずれした声がつぶやかれた。しかし、子供たちは、日が近づくにつれ、楽しみにするようになった。運悪く今にも降り出しそうな空模様。子供たちは、どうなるのかと心配そうな顔。しかし、「行く。」と聞けば、雨雲をも吹っ飛ばしそうなうれしげな顔に一変。館内ではプラネタリウムによって写し出される星、説明されていく広大な宇宙の話に驚嘆していた。

 みかん狩り
 10月以来楽しい行事が相次いで、その興奮もさめやらぬ時に思いがけなくも、丸井パンのみかん園より特に本校の子供達に無料招待があった。11月6日午前10時半出発、曇天でうす寒い日であったが皆胸にみかん園の記章をつけ、張切って2台のバスに便乗、北古口で下車した。みかん園はすぐそばであった。みかんは子供の背丈位であったが、沢山実をつけ食べ頃で皆よく注意を守って、大変楽しい行事であった。昼食後1時間後全員無事帰校。不参加者には持ち帰ったみかんを分けた。
 


 


     

 

2015年10月1日木曜日

西戸田の里 (1)

 2ヶ月ほど前に藤原さんから、昭和42年3月発行の「西戸田の里」という小冊子を送っていただきました。いわゆる「学校だより」なのでしょうか、西戸田養護学校の第1号のようです。貴重な資料をありがとうございます。10月中に、4回に分けて掲載させていただきます。


 先ず、目次の一番最後にある、「西戸田里の会」の記事から始めたいと思います。


 西戸田里の会

 1本年度の里の会
日時 41年11月6日(日)
行事 
 ・運動会
 小規模ながら退所生を交えて、他校では見ることのできない西戸田独特の運動会でした。
 ・県警ブラスバンド
 県警の御厚意で「星条旗をかかげて」「童謡メドレー」「民謡」など熱のこもった演奏に時間のたつも忘れて、一同耳を傾けました。
  ・宝さがし
 退所生が、在所生を慰問するために計画されたもので、低学年の子どもが宝を探しえずに、まごまごしていると、退所生がそばへ行き、一しょに探してあげたりする和やかな風景があちらこちらに見受けられました。在所生に続いて退所生の宝探しも場所をかえてやりました。

 2西戸田里の会のあゆみ
 昭和25年以来の退所生が500人近くなったのと、同窓会を開いてほしいとの退所生の要望に答えるため、昭和30年本校の5周年記念として健康調査をやり、11月6日に第1回目の同窓会として発足、しかし、同窓会といえば一般学校と同じく学校だけの感じがあまりにも強すぎるので、いろいろな角度から検討して31年度より西戸田里の会と名づけられた。
 当時は退所生の中から人を選んで、全市を二区単位四会場に分けてそこに集まり、人数を割りあて職員と共に家庭訪問をして健康調査をし、学校との連絡がつくよう固めた。
 退所生といっても社会人ではないので、入所生の父兄の山根節男氏に初代会長をお願いした。38年にはそれぞれ社会人になった人も、大学生もいるので、本当の意の会長をとの声がたかまり、自主的に亀井克之氏が受けてくださった。その間、会長、役員、学校保養所職員の尽力によって、子ども自身の自主的な積極的建設的なよりよい里の会へと発展しつつある。特に38年度より里の会だけでなく、退在所生を交えた運動会をやるようになったのは、双方の結びつきから考えてとても喜ばしいことだと思う。
 会長も41年11月に改選があり、3代目会長に安田三治氏、副会長に大西晃佑氏ときまった。今後の活躍を期待したい。

 3 里の会会員の現況
 4 現在在所人員


 あとがき

 立春の声を聴いて旬日、寄せられた原稿を編集しながら、人の力、人の和といったものを心に強く感じた。この一年の本校の歩みについての記録であり、やがては沿革となり、同窓会員の鎖となることを念願しながらあとがきとする。